チューリップ

 数ある花の中でも、チューリップは、最も身近な花の一つではないでしょうか。その証拠に、花の絵を描くと、ほとんどの人はチューリップの絵を描きます。幼い頃、クレヨンで描いたチューリップのイメージが大人になっても懐かしく、親しみ深く思い出されるからかも知れません。
 こんな、庶民的なチューリップも、今や、輸入物等も多くなり、アンジェリケに代表される、八重咲種、花びらの先が尖ったユリ咲、花びらの先端にぎざぎざのフリルがついたフリンジ咲や、花全体がちじれた様なパーロット咲など変化に富んだ姿のチューリップが目に付くようになり、お花屋さんの店先も一段と賑やかになった様に思います。
 そんな、チューリップを冬季間の作物として取り組み5年目の冬を迎えます。 当時、新潟や、富山は有名でしたが、北海道ではまだ産地が無く、また球根の輸入も自由化され、オランダ産の良い球根も手に入れやすくなった状況もあり、冬の期間、遊んでいた施設や、労力の有効利用にもなる新しい品目として選んだのがチューリップだった訳です。
 ほとんど、手探りのなかで始めたチューリップ栽培。試行錯誤の中で巡り会う発見もまた楽しいもの。チューリップには、香りを持つものと持たないものがある事も新しく知った事の一つ。良い香りがする物は黄色に多いらしく、ゴールデン・オックスフォードや、ヨコハマが良い香りがする事をご存じでしたか?また、球根が前作物の残した余分な肥料を吸収してくれるお陰で、連作障害の予防にも一役かってくれることも思いがけない収穫でした。間もなく、ハウスのなかに一足早い春を告げるチューリップに夢を托して…。


苫小牧民報 1995年(平成7年)11月18日(土曜日)掲載


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