トルコぎきょう(1)

 視察先の農家の壁にあった色紙に、こんなふうに書かれていた。「花は見るものではなく、看るものである」と……。
 時が流れた。
 咲いた!咲いた!トルコの花が…、まだ雪に覆われている季節に種を蒔いた「トルコギキョウ」がやっと咲き始めた。
 ユリ等はつぼみで出荷するのに対し、「トルコギキョウ」は咲かせて出荷する花の代表。そんな訳で、収穫を迎えたハウスは色とりどりの花が咲き乱れことのほか見事。その美しさは、忙しい現実を忘れさせてくれる。
 雨を避けるためビニールを張ってやり、病気にならないか、虫に食われないか気を配り、暑さ寒さからも守ってやって、水も、欲しい時だけ飲ませてやりようやく咲いた「トルコギキョウ」。
 種をまいてからから150日もかかった計算になる。稲は四月に種を蒔き、お盆頃に花を咲かせるので100日強、たいがいの花が100日前後で花を咲かせるなか、「トルコギキョウ」ほど、のんきな花もない。思い返せば草取りに追われた毎日でもあった。
 春に種まき、秋まで育てて冬が来る前に収穫する。農業って、なんて気のながい商売なんだろうとつくづく思ってしまう。
 でも、丹精込めた作物ほど、確かで大きな収穫の喜びを私たちに教えてくれる。  さあ、待ちに待った出荷が始まる。私が看た花の。

            ……to becontinued


苫小牧民報 1995年(平成7年)9月9日(土曜日)掲載


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